脂質異常症と高血圧をコントロールしよう
採血はお嫌いですか?しかし、あなたの健康状態を確認するために血液検査は大変重要です。
監修 | 昭和大学横浜市北部病院 木村 聡 |
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定期的な検診をおすすめします。
病気の予防は定期的な検診を行い、少しでも異常があれば早めに対策をとることです。医師にお気軽にご相談ください。
動脈硬化ってなんだろう?
動脈硬化は、血管の壁にコレステロールなどが溜まり弾力性がなくなる結果、血管が狭くなったり塞がってしまう病気のことです。老化現象の一種なので10代からすでに始まりますが、40歳を過ぎるころから症状が出やすくなります。
動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な病気を起こします。日本人10人のうち3人はこれらが原因で亡くなっています。
どうしたら予防できるのでしょうか?

動脈硬化の危険度 セルフチェック
- 血圧が高めである。
- コレステロールや中性脂肪の数値が高い。
- 年齢は45歳以上(男性)、55歳以上(女性)である。
- タバコを吸う。
- ウエストは85cm以上(男性)、55歳以上(女性)である。
- 食生活がみだれがちだ。
- 糖尿病と言われたことがある。
- 運動はあまりしない。
- 家族や親戚に心筋梗塞や脳梗塞で亡くなった人がいる。

当てはまる数が多いほど、動脈硬化の危険度が高くなります。
動脈硬化を防ぐためには、危険因子を減らすこと
動脈硬化の危険因子
動脈硬化を起こす危険因子には、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙などがあります。あなたの心がけによって、これらはコントロールできる可能性が十分あります。
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動脈硬化の危険因子
コントロールできるもの
・脂質異常症
高LDL(悪玉)コレステロール血症
低LDL(善玉)コレステロール血症
高トリグリセライド血症
・高血圧
・糖尿病
・喫煙
コントロールできないもの
・加齢
男性45歳以上、女性55歳以上
・冠動脈疾患を発症した家族がいるかどうか -
メタボリックシンドロームと動脈硬化の関係
脂質異常症に、高血圧、糖尿病、さらに「内臓脂肪型肥満」が加わると、メタボリック・シンドロームという動脈硬化の特急コースに乗ってしまいます。お腹のまわりが大きな人は要注意です。
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動脈硬化を防ぐために
動脈硬化を防ぐためには、危険因子を減らすよう、日々の心がけが大切。中でも脂質異常症と高血圧は、自覚症状が出にくいため見逃されてしまいがちです。症状が出る前に、予防へと踏み出しましょう。そのためにも検査を受けることが重要です。

脂質異常症には3つの脂質がかかわっている
脂質異常症とは
脂質とは血液に溶けている脂肪分のことで、悪玉と呼ばれるLDLコレステロール、善玉と呼ばれるHDLコレステロール、 さらにトリグリセリド(中性脂肪)等があります。脂質異常症*1とは、これら脂質の量が多すぎたり少なすぎたりする病気です。
*1もともと、脂質が高いという意味で「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールのように低い方が異常な場合もあるため、2007年、「脂質異常症」に変更されました。

3つの脂質の働き
コレステロールは体の細胞膜やホルモンの構成成分として重要な働きをしていますが、LDLコレステロールが多すぎる と、動脈壁にコレステロールが沈着してしまいます。
一方、HDLコレステロールには、動脈壁に溜まった余分なコレステロールを回収・処理する働きがあります。
トリグリセリドは生体がエネルギー不足になった非常時のエネルギー源となりますが、過剰に存在すると動脈硬化が進行します。

脂質異常症は狭心症や心筋梗塞を発症しやすい
狭心症と心筋梗塞
動脈硬化が進行すると、心臓をとりまく冠状動脈が狭くなる「狭心症」や、閉塞してしまう「心筋梗塞」になってしまいます。どちらも胸が締めつけられるような痛みを呈します。
一方、慢性的に心臓の機能が低下すると、血液中にあるBNPやNT-proBNPという物質の値が上昇します。血液で簡単に検査ができ、心不全などの病態の診断に大変有用です。

脂質異常症の診断基準
脂質異常症は血液検査*で調べることができます。次の3つの条件のうち1つでも当てはまれば脂質異常症です。
*:前日夜から絶食した空腹時の採血で判断します。
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LDL(悪玉)
コレステロール
140mg/dL以上 -
HDL(善玉)
コレステロール
40mg/dL未満 -
トリグリセリド
150mg/dL以上

血圧が高くなるほど脳卒中や心筋梗塞の発症率が高くなる
高血圧と動脈硬化
高血圧とは血管に高い圧力がかかる状態を言い、これが続くと血管壁に負担がかかり、血管は弾力性が失われ硬くなります。そこに脂質異常症が加われば、動脈硬化はさらに促進されます。
下の図のように、高血圧単独でも脳卒中やそれによる死亡のリスクが高まります。また、一命をとりとめても運動麻痺など後遺症を残す場合が少なくありません。

高血圧の診断
血圧計で簡単に測定できる血圧ですが、一般には収縮期(最高)血圧140mmHg、または拡張期(最低)血圧90mmHg以上の場合に高血圧が疑われます。
高血圧には、腎臓の病気やホルモン分泌異常が原因となる場合があります。診断にはアルドステロンやレニンなどのホルモン濃度とその比率が手がかりになります。

脂質異常症や高血圧の対策は、まず生活習慣の改善から
食事療法
バランスのとれた食事を心がけ、肥満を予防しましょう。
動物性脂肪はコレステロールを増やすため、肉類(牛・豚・鶏など)は減らし、魚や大豆を多くとりましょう。
食物繊維の多い食品や、抗酸化物質を多く含む野菜や果物などをとるように心がけましょう。
塩分のとりすぎは血圧が上がるので危険です。また、塩分のとりすぎは高血圧をまねくので注意しましょう。

運動療法
体をできるだけ動かすように日常生活を工夫し、軽い運動を生活に取り入れましょう。
速歩、水泳、サイクリングなどの運動を、1日30分以上、できれば毎日、週180分以上続けることが理想的です。

検査しながら、お薬も必要に応じて使用する
薬物療法
食事療法や運動療法を3~6カ月続けても、LDL(悪玉)コレステロールの数値が改善しない場合は、薬物療法を考えます。
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脂質異常症の治療薬
血清脂質のうちの、どの数値が高いかによって服用する薬の種類が違ってきます。
例えば、LDLコレステロールが高い場合にはスタチン系薬を、トリグリセリドが高い場合にはフィブラート系薬やニコチン酸誘導体、EPAなどを服用します。 -
高血圧の治療薬
数種類の抑圧薬があります。代表的な薬はカルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬の5種類で、複数組み合わせて使うこともあります。

服用を開始してからは定期的に検査を行い、血清脂質の評価や副作用のチェックをしてもらいましょう。
数種類の薬を服用する場合は、一緒に服用してはいけない薬もあります。医師とよく相談しましょう。

参考資料 | 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 高血圧治療ガイドライン 日本動脈硬化学会HP http://jas.umin.ac.jp |
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