もしかしてそのムズムズ
花粉のしわざかも!?

風邪っぽい、花がむずむずする、目がかゆい…
本当にそのままで大丈夫ですか?

監修

昭和大学横浜市北部病院
内科系診療部門 臨床病理診断科 教授

木村 聡

早めの対策で症状を最小限に抑えましょう。

花粉症の患者さんは年々増加中。いままでかかったことがない人でも発症の可能性があります。検査によって、あなたはどんな花粉、どんな物質にアレルギーがあるのか目星がつきます。早めの対策で症状を最小限に抑えることが、花粉症を乗り切る最も有効な方法です。

花粉症とは

花粉症とは、草木の花粉に接すると、鼻がムズムズするなどアレルギーの症状が起こる疾患の総称です。
症状としては、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなど風邪に似た症状が起こる「アレルギー性鼻炎」、目のかゆみや充血、腫れが起こる「アレルギー性結膜炎」などがみられます。アレルギー症状には季節性と通年性のものがあります。花粉症は草木の花粉が飛ぶ時期によくみられる季節性アレルギーです。特に春先のスギによる花粉症は有名で、患者さんの数も多く、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で起こる病気として社会問題化しています。
いっぽう、上記の症状が、季節に関係なく一年中みられる通年性アレルギーもまれではありません。その原因は、アレルギーを引き起こすアレルゲンが、ハウスダストやダニ、ペットなど一年を通じてみられる物質だからです。この冊子では、季節性や通年性アレルギーの症状から逃れるには、何に注意したらよいかをやさしく解説します。

  • 季節性アレルギーの原因となる花粉

    ヒトの健康に影響を与える花粉として最も多いのは、春のスギ(2月ごろから花粉が飛び始める)やヒノキ(スギにやや遅れて飛散)によるものですが、北日本のシラカンバなど地域的にも特徴がみられます。また夏のイネ科の植物、秋の雑草であるブタクサやヨモギなど、季節によっても飛散する花粉の種類は異なります(P.14)。スギ花粉は何10キロも遠方まで飛びますが、イネ科や雑草の花粉は数百メートルしか飛ばないといわれています。

    通年性アレルギーの原因

    ダニやゴキブリ、カビ、ペットのフケなどが、ほこりと一体になったものを「ハウスダスト」と呼び、アレルギーの原因となります。鼻や眼に花粉症のような症状をひき起こすだけでなく、気管支喘息やアトピー性皮膚炎を誘発する場合があります。

  • アレルゲン

アレルギーが起こる仕組み

花粉症は免疫機能の過剰反応で起きてしまう
アレルギーの発症には、ヒトの免疫機能が大きく関わっています。
ヒトの体内には「IgE抗体」と呼ばれる蛋白質が存在します。IgE抗体は、花粉やハウスダストなどアレルゲンが、吸入されたり目に入ったりした際に反応するセンサーの役割をしています。ヒトの体内には、スギ花粉やハウスダストなど多種多様なアレルゲンに応じ、様々な種類のIgE抗体が産生・蓄積されており、とくにアレルギー症状の強い患者さんは大量に持っています。
もしアレルゲンが体内に侵入すると、ヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学物質を放出させます。これらの化学物質は神経や血管を刺激する作用があるため、放出されると、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー反応を引き起こすのです。

花粉症とlgE抗体

花粉症のいろいろな症状

くしゃみ、鼻水などアレルギー性鼻炎の症状は風邪に似ています。そのため風邪と間違って対応され、症状がいつまでも改善せず困っておられる方も少なくないようです。通常、風邪の場合は「発熱」や「のどの痛み」、「粘り気のある黄色っぽい鼻水」がみられるのに対し、アレルギー性鼻炎では「サラサラとした水のような鼻水」が現れやすい点が異なります。
また、アレルギー性結膜炎の症状は「目の充血」「かゆみ」「異物感」のほか「涙が出る」「サラサラとした水のような目やにが出る」「まぶたの裏にブツブツができる」などの特徴があります。
患者さんによって異なりますが、花粉の季節に、目の症状と鼻の症状が重なれば、かなり疑わしいと考えられます。

三大症状

医師の診断を受けましょう

現在の症状がアレルギーによるものかを調べます。
まず、いつから、どんな症状があるのか、といった問診や、目、鼻、ノドなど患部の診察が行われます。次いで余裕があれば、アレルギー反応の証拠をとらえるため、鼻水や涙、目ヤニなど分泌物中に好酸球(白血球の一種)が増加していないか顕微鏡で調べます。
アレルギーの関与が確認されたら、何がアレルギーの原因物質なのかを特定する検査を行います。プリックテストなどの皮膚テスト、鼻粘膜誘発検査、特異的IgE抗体検査などで、原因アレルゲンが特定されます。

検査の種類

  • 皮膚テスト

    腕などの皮膚に少し傷をつけ、原因と考えられるアレルゲンのエキスを滴下し、腫れやかゆみなどの反応が出ないかを見る検査です。

  • 鼻粘膜誘発検査

    原因として考えられるアレルゲンを染み込ませた紙片を鼻腔の粘膜に触れさせて反応を見る検査です。

  • 血液検査(特異的lgE抗体検査)

    腕などの皮膚に少し傷をつけ、原因と考えられるアレルゲンのエキスを滴下し、腫れやかゆみなどの反応が出ないかを見る検査です。

治療について

さまざま研究が行われていますが、残念ながら現時点では、花粉症を完全に治すのは難しく、症状に応じて薬でコントロールする治療が主流となっています。薬で症状を緩和することで、日常生活への影響を最小限に抑えることは可能です。また原因となる物質が特定できれば、発症の予防も視野に入ります。
おもなアレルギーの薬には、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などがあり、症状の緊急性や重症度、種類や治療目的などに応じ使い分けられます。花粉症は世界中にたくさんの患者さんが存在するため、治療薬は年々進化を続けており、以前に比べ効果が大きく、より副作用の少ないものが開発されています。
アレルギーであることを確実に診断し、その原因物質が見極められれば、最も効果的な治療を選ぶことができます。季節の変わり目、花粉の飛散時期などに注意を払い、先手を打って計画的に行動することが、よい結果を生む秘訣です。

治療の種類

  • 薬物療法

    投薬によってアレルギーの症状をコントロールする治療法です。内服、点眼、点鼻薬が使われますが、早めに治療を開始した方が、症状を和らげることができます。抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサン薬、ステロイド薬などが使われます。再発を防ぐため、症状がないときでも使用を続ける場合がありますので、主治医とよく相談して、いつやめるかにも注意しましょう。

  • アレルゲン免疫療法

    アレルギーの原因となるアレルゲンを少しずつ体内へ吸収させることで、アレルゲンに慣れさせて、アレルギー反応が弱まっていくことを期待する治療法です。数年間という長い期間での治療になりますが、寛解(ほぼ消失)する可能性がある治療法といわれています。従来は「皮下免疫療法」という皮下注射による療法が主流でしたが、最近では簡便で副作用の少ない「舌下免疫療法」が注目されています。

  • 手術療法

    鼻の粘膜の切除や、鼻水を誘発する神経を遮断する手術です。鼻づまり、鼻水、くしゃみの症状に効果があります。レーザー手術、電気凝固法、凍結手術などの方法があり、薬剤での効果が期待できない時に選択肢となります。

予防に勝る治療なし

まずはアレルギーの原因物質であるアレルゲンを特定し、日常生活での接触を極力避けるよう心掛けることが大切です。

花粉対策

花粉がアレルゲンである場合、花粉の飛散状況に注意を払う必要があります。花粉が舞う季節では、外出時は花粉に暴露されないよう、帰宅時は家の中に持ち込まないよう心がけましょう。

  • 花粉症を防ぐ服装

    メガネ、帽子、マスク、スカーフ、花粉が付着しにくいツルツルした素材の上着を使用。家に入る前に衣類についた花粉を払い落とします。家に入ったら、うがいや洗顔をまめに行いましょう。

    花粉症を防ぐ服装

ハウスダスト対策

ハウスダストにおいて、最も注意が必要なのはダニやカビです。基本は「ダニやカビを繁殖させない」こと。ダニやカビが発生しにくい環境とダニの排除が肝心です。
いずれにしても、自分にとって「何がアレルゲンなのか」を理解することが大切です。原因がわかれば対策をとることができます。アレルゲンを知り、予防に努めることが快適な毎日を送るためのカギとなります。

  • 注意したいアレルゲン

    【外】
    花粉、排気ガス、煤煙、土ぼこり

    【室内】
    カビの胞子、ダニの死骸やフン、綿埃、食べ物のカス、ペットの毛、フケ、タバコの煙

    花粉症を防ぐ服装
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