みなおしてみませんか?あなたの歯生活

あなたの生活習慣が歯周病を呼び起こす!?気になったらまずは検査を!

監修

鶴見大学歯学部 探索歯学講座

花田 信弘

早めの唾液検査をおすすめします。

生活習慣病の一つと考えられている歯周病。一度、歯周病になってしまうと、充分な治療をしても完全に歯周組織は治りません。そのため、できるだけ早いうちに処置を施し、進行を遅らせて歯を長持ちさせることが大切です。

歯周病は生活習慣病です。

歯周病は、口腔内に生息する300~500種類もの歯周病菌によって引き起こされる、歯茎の炎症です。日常の生活習慣がこの病気の発症に大きく関係していることから、最近では生活習慣病の一つと考えられています。
厚生労働省の調査では、40歳以上の8割が歯周病にかかっていることがわかっています。具体的には、歯茎やそれを支える骨が、歯周病菌によって引き起こされた炎症で壊れていきます。進行すると最終的には歯が抜けることになりますが、最近の研究ではそれにとどまらず、歯周病が全身の疾患に関わっていることが明らかになりました。歯茎で増殖した歯周病菌が血液を介して全身に広がると、脳血管疾患や心疾患などを起こすほか、糖尿病や骨粗鬆症を悪化させたりもすることから、歯周病が人の生命にも影響することがわかってきました。

甲状腺は、喉仏の下にあるホルモン分泌器官

以下の疾患がある場合には、歯周病の恐れがあります。

  • 1

    過度な喫煙や高コレステロールな食事が
    原因の…

    血管系疾患
  • 2

    糖質の多い食事や運動不足などによって
    引き起こされる…

    糖尿病
  • 3

    カルシウム不足や加齢による骨密度の低下が
    原因となる…

    骨粗鬆症

血管系疾患と歯周病

歯周病は、歯周病菌による歯茎の炎症ですが、増殖した歯周病菌は歯茎から血液に入り込み、血管壁での炎症を引き起こします。
血液に入り込んだ歯周病菌は、この血管内皮に炎症を起こすといわれています。血管内皮細胞が炎症を起こすと、動脈硬化を誘導する物質を出して、コレステロールを血管壁に取り込みます。取り込まれたコレステロールはプラーク(粥腫)という沈着物になり、血管を狭くして、血液を通りにくくしてしまいます。心臓を通る冠動脈でこの状態が起こると、狭心症を発症します。さらにプラークが大きくなり、血管壁から剥がれて血管が詰まると、心臓では心筋梗塞、脳では脳梗塞を発症し、生命を脅かすことになります。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの人は、動脈疾患予防のためにも、歯周病予防・治療は大切になってきます。

適度な運動、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠と併せて、歯周病予防を心がけ、リスクを減らすことが大切です。

糖尿病と歯周病

歯周病が糖尿病に悪影響を与えていることが、最近の研究でわかってきています。もともと糖尿病患者に歯周病が多いことは、疫学調査でわかっていました。これについては糖尿病患者のように生活習慣の悪い人に歯周病が起こりやすい、つまり歯周病は糖尿病の合併症と思われていたのですが、実はその逆もあることがわかってきました。
歯茎から血液に入り込んだ歯周病菌のほとんどは白血球などにより死滅してしまいますが、歯周病菌は細胞内にエンドトキシンという内毒素を持っており、歯周病菌が死滅してもエンドトキシンは血液で全身に運ばれてしまいます。全身に運ばれたエンドトキシンはTNF-α(ティー・エヌ・エフ・アルファ)という物質の産生を促進させます。TNF-αは全身で血糖値を下げる働きをするインスリンの作用を阻害して血糖値を上げてしまい、糖尿病を悪化させることがわかってきました。

糖尿病予防・治療で歯周病の進行を抑え、歯周病予防・治療で糖尿病のリスクを減らすことにつながります。
糖尿病がある人は歯周病になりやすく重症化しやすい 歯周病がある人は糖尿病の治療が困難になりやすい

骨粗鬆症と歯周病

骨粗鬆症は骨がもろくなってしまう病気ですが、歯を支える歯槽骨にも影響をしていることがわかってきました。最近の調査では、カルシウムの摂取量が少ないと歯周病になりやすいという報告がされています。カルシウムの摂取不足が直接歯周病を引き起こすことはありませんが、間接的に歯周病を悪化させることは、数々の調査や研究で明らかになっています。
現在、日本には約1,100万人の骨粗鬆症の患者さんがいると推定されていますが、高齢化によって、今後さらに増えるといわれています。骨粗鬆症患者のおよそ8割は女性で、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少が起こる閉経期(50歳以降)から、患者数が増加します。

カルシウム不足による骨粗鬆症・歯周病予防のためにも、普段からカルシウムを多く含んだ食品を摂取するように心がけましょう。

歯周病予防のための歯磨きとは?

歯周病は歯周病菌によって起こるため、口腔内の歯周病菌を増加させないことが予防につながります。とくに高齢者では唾液の分泌量が落ちていますから、口腔内は歯周病菌が増殖しやすい環境になりがちです。また、喫煙も唾液の分泌に悪影響を与えます。歯周病予防で大切なことは丁寧な歯磨きを生活習慣の中で取り入れて、口腔内を清潔にすることです。

8020運動(はち・まる・にい・まる運動)

厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」という運動です。8020運動の実現に向けて、歯周病の重症化を防ぎ、8020達成者を増やして、健康長寿社会を目指しましょう。そのためにも1年に1回、歯周病検査を受けることが大切です。

  • 磨き方

    歯の磨き方の基本は、一歯ずつ丁寧に磨くことです。でも、自分に適した磨き方があるのです。歯科医師・歯科衛生士に指導してもらい、自分の磨き方を修得しましょう。ここでは、歯周病予防、治療に有効なスクラッビング法バス法を紹介します。

  • スクラッピング法

    歯の外側(ほっぺた側)は歯ブラシの毛先を歯に直角にあて、軽い力で小刻みに動かします。歯の内側(舌側)は45°にあてて同じように動かします。歯茎が健康な人向きです。

  • バス法

    歯の外側も内側も、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に向けて45°の角度にあて、軽い力で小刻みに動かします。歯茎に炎症がある人向きです。


そのほかにもさまざまな磨き方がありますが、歯ブラシの毛先を上手に使って歯垢(プラーク)を確実に取り除くことが大切です。
歯垢(プラーク)が残りやすい場所をチェック

プラークが残りやすい場所をチェックして、プラークを取り除くようにしましょう。

  • 歯と歯の間
  • 奥歯のかみ合わせ
  • 歯と歯茎の境目
  • 歯並びがでこぼこしている所
  • 生えている途中の歯

などは、より丁寧に歯磨きしましょう。

気になったら、まずは検査を!

  • 従来の歯周病検査

    歯周病の検査は、一般的には「プローブ」という金属器具を用いて、歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)の深さを調べます。器具を用いるため、多少の苦痛を伴います。溝が深くなるほど、歯周病が進行しているということになります。

    CPIプローブという道具を使い、歯と歯茎の間に入れ、CPI指数(歯周疾患指数)を調べます
  • 唾液で歯周病検査

    最近では、唾液を検査して歯周病を発見することも可能となっています。歯周病は歯茎の炎症ですが、唾液中に含まれるLD(乳酸脱水素酵素)を測定することにより、歯肉の炎症の程度を見ることができます。また、歯茎に炎症があると出血が起こりますが、唾液に含まれるHb(ヘモグロビン)を測定することで、出血の程度も数値化ができます。これらの検査は非侵襲性で、苦痛を伴わない検査です。

    STEP1

    唾液採取セットを受け取ります。

    STEP1

    唾液採取用のガムを約5分間噛み、コップに唾液をためます。
    ※2時間前から飲食、歯磨きをしないことが望ましい。

    STEP3

    STEP2で採取した唾液をスポイトで透明容器に1滴入れ、残りの唾液を黄色容器の半分くらいまで入れます。


    ※液体(保護液)に触れないこと
    STEP4

    ラベルと提出用袋に指名等を記入し、ラベルを2本の容器に貼って提出します。

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