その症状、もしかして…
甲状腺の病気かも?
ちょっとした体調の変化、我慢しないで体の状態を医療機関で確認してみてはいかがですか?
早めの受診をおすすめします
暑がり、イライラ、手足の震えをきたすバセドウ病などの甲状腺機能亢進症。寒がり、体がだるくなり、肌がカサカサになる甲状腺機能低下症。首にしこりができる甲状腺腫瘍。見逃されやすいこれらの病気には、甲状腺の検査が有用です。治療の選択肢も揃った今、早めの受診が役立ちます。
甲状腺とは
甲状腺は、喉仏の下にあるホルモン分泌器官で、縦2~3cm、横4~5cm、厚さ1cm程度の小さな臓器です。海藻などに含まれるヨードという栄養素をもとに、「甲状腺ホルモン」を産生、分泌しています。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を司るホルモンです。多すぎると新陳代謝が活発になりすぎて興奮状態が持続してしまい、逆に少なすぎると気力や活力が低下します。快適な生活を送るためには、適切な量の甲状腺ホルモンが必要とされます。

甲状腺疾患の症状と患者の男女比
甲状腺ホルモンが分泌過剰な状態では、イライラ、動悸、多汗、手足の震え、眼球の突出や甲状腺の腫れが徐々に現れます。 一方、分泌が不足すると、肌のかさつき、気力の衰え、便秘、体重増加、寒がり、眉毛の脱毛などの症状が現れます。どちらも、更年期障害やいわゆる「不定愁訴」と混同されてしまうことがあります。また、甲状腺疾患患者の8~9割は女性といわれていますが、女性特有の病気ではありません。日本国内に甲状腺疾患の患者数は500~700万人もいると推定されていますので、男性も女性も症状があれば、早めに受診しましょう。

甲状腺の検査
甲状腺の臨床検査には、おもに血液検査と超音波検査があります。
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血液検査でホルモン濃度を測定します
甲状腺ホルモンには2種類あり、ヨード分子が3つ入ったT3(トリヨードサイロニン)と、4つ入ったT4(サイロキシン)が知られています。どちらも、その99%以上はタンパク質と結合した状態で血液中に存在し、1%にも満たないごく一部はタンパク質と結合しない遊離型として血液中に存在しています。ホルモンとして活性を持つのは遊離型のため、T3、T4より、FT3(遊離トリヨードサイロニン)、FT4(遊離サイロキシン)が頻繁に測定されます。
一方、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種TSHは、甲状腺刺激ホルモンと呼ばれ、甲状腺からのT3、T4の分泌を高める働きがあります。TSHは血液中の甲状腺ホルモン濃度を調節しているため、治療効果の判定や甲状腺ホルモン過不足の評価に使われます。例えばFT3やFT4が低値を示さなくても、TSHが高めの場合は、甲状腺ホルモンが不足していると推定されます。 -
血液検査で自己抗体の検査をします
バセドウ病や橋本病では、自分の甲状腺組織を攻撃してしまう自己抗体が発症に深く関わっています。これらの血中濃度測定は、診断や経過観察、治療効果の判定に有用です。
分類 項目名 バセドウ病の診断に有用な
自己抗体の検査抗TSHレセプター抗体(TRAb)
甲状腺刺激抗体(TSAb)
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)橋本病の診断に有用な
自己抗体の検査抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
抗サイログロブリン抗体(TgAb) -
超音波検査でしこりや腫れを観察します
甲状腺の状態を画像で観察するために行われるのが、超音波検査です。人間の耳では聴こえない高い周波数の音波で甲状腺を可視化するもので、人間ドックで肝臓や胆嚢を観察するのと同じ技術で、被曝の心配もありません。超音波検査は、甲状腺にしこりや腫れがある場合、とくに威力を発揮します。
悪性の甲状腺腫瘍が疑われる場合は、超音波の画像を見ながら腫瘍に針を刺して細胞を採取し検査する「細胞診」が行われます。

バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて起こる病気です。20~30代の女性に多くみられ、男女比は1:5といわれています。 甲状腺ホルモンが数週間以上をかけて徐々に分泌過剰となり、全身の新陳代謝が過剰となった結果、心臓や筋肉が常にフル回転しているような状態になります。精神的にも興奮状態となり、イライラしやすくなります。

おもな治療法
バセドウ病には、3種類の治療方法があります。
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内科的治療
抗甲状腺剤を飲んで、甲状腺ホルモンの分泌を抑制する方法です。2カ月ほどで甲状腺機能が正常化し症状も軽くなることが多いです。しかし、副作用として、薬が効きすぎて寒がりなどの症状が出ることや、まれに血液中の白血球が減り、感染症にかかりやすくなることもあるため、定期的な血液検査が必要です。
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外科的治療
甲状腺の腫れが大きく、薬で治療できない場合、手術で甲状腺を切除する治療方法です。
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放射線治療
放射性ヨードを飲む方法です。甲状腺に取り込まれ、その放射線によって甲状腺の機能を低下させるという治療法です。効き目は早いのですが、副作用として甲状腺機能低下をきたす場合があります。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能が低下し甲状腺ホルモンが不足する病気で、代表的な疾患は「橋本病」です。日本人医師の橋本策先生が世界で先駆けて発見したことから、その名がつきました。男女比は1:20といわれるほど、女性に多い病気です。
橋本病は免疫異常が原因とされ、自分の甲状腺組織を攻撃する自己抗体が産生されるようになります。長い経過をたどりながら、甲状腺機能が低下していくことがあり、症状も徐々に現れるようになります。30~50代の女性に多くみられるため、更年期障害や不定愁訴と間違われる場合も少なくありません。

おもな治療法
甲状腺機能が低下している場合には、甲状腺ホルモン剤による治療が行われます。1日1回の内服で済みますが、多くは何年間も内服が必要となるため心臓に疾患のある人や高齢者は少量から服用し、徐々に増量して甲状腺ホルモンの血中濃度を測り、心電図などで心臓の状態を観察しながら、長期的な維持量を決定します。
甲状腺腫瘍
甲状腺にできたしこりを「甲状腺腫瘍」といいます。甲状腺腫瘍には良性と悪性があり、注意しなければならないのが悪性腫瘍です。しこりや腫れを感じたときには、受診し検査を受け、良性か悪性かを鑑別する必要があります。
良性腫瘍の代表は、濾胞腺腫です。甲状腺の中に水分が溜まった構造物が現れます。腫瘍が大きくならない限り、多くの場合は経過観察となります。
悪性腫瘍にはいくつかのタイプがあり、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、髄様がん、未分化がん、血液がんの一種である悪性リンパ腫が含まれます。このうち、最も多いのは乳頭がんです。乳頭がんは、増殖速度が非常に遅いがんなので、他のがんよりも治療効果が現れやすいのが特徴です。
しこり
声がかすれる、のどに違和感がある、首にしこりがある、首が腫れるなどの症状があるときは、早めに受診しましょう。
おもな治療法
甲状腺がんの治療は、血液がん(悪性リンパ腫)を除けば、手術による摘出が基本です。
手術の前後には、放射線治療やホルモン療法が併用されることもあります。早期に発見すれば、甲状腺がんの多くは命を落とすことなく、通常の生活に戻ることも可能です。頸部にしこりや腫れを感じたときには、早めに受診しましょう。
