なぜ乱用薬物検査?

企業などの職域において乱用薬物検査を実施する目的は、主には、(1)顧客や地域の安全確保(2)自社の社会的信頼の確保と維持(3)自社の従業員管理が挙げられます。また、狙いや期待する効果によっていくつかの使い方があります。

薬物検査を実施する目的

  • 顧客や地域の安全確保

    旅客業の場合は乗客の命をあずかります。運送業の場合は航空、海運、鉄道、トラックといった大型の車両などを運行するので事故は大惨事に直結しますし、積み荷が危険物であることもあるでしょう。

    また、発電施設やガス・LNG・石油などのエネルギー施設、大型の化学工場などでは事故やテロリズムが発生すると周辺地域にも大きな被害をもたらすことになります。操縦者、作業者、あらゆる入館者などを対象に違法薬物の使用がない事の確認もされるようになってきています。

    これらの業種では、安全管理は極めて厳格に行われています(違法薬物の不使用確認・安全対策)

  • 社会的信頼の確保・維持

    従業員による不祥事が発生すると大きな損害を被ることになる事業者は、社会からの「信頼」を維持し続けるために、事業リスクへの対策の一つとして従業員が違法薬物を使用していない事の確認もするようになってきています。

    「顧客から信頼されていること」が何よりも大切な業種があります。医療機関の場合は患者や家族から、医薬品製造業者や食品製造業の場合は消費者から、公共サービスでは地域住民から、学習塾など教育や能力開発に関する業種では生徒や家族から、金融・保険・警備業では契約者から、人材派遣業では派遣先から、レジャー、エンターテインメント、芸能ではファンや共感者からなどのように、営む事業の商品やサービスを提供する先の人々から信頼されることが大切です。

    これらの業種では、「スキルアップのための教育、倫理や道徳を含めたコンプライアンス教育、自己啓発の支援」などの人材育成面とともに、「人材としての能力・健康・適性など」の評価や管理が行われています。健康管理として行われるアルコール摂取量のチェックも一例ですが、コンプライアンス遵守のために「薬物の危険性・違法薬物問題に対する教育」や「違法薬物の使用がない事のチェック」も行われるようになってきています(違法薬物に対する教育とチェック)

  • 自社の従業員管理

    人命にかかわる業種では「自社以外の安全確保」のために、また、事件・事故などの不祥事によるマスコミ報道で社会的信頼を失墜すると思われる業種では「自社の信頼確保」のために違法薬物対策がおこなわれますが、シンプルに「自社の従業員の管理」のために薬物検査を導入するケースもあります。(薬物不祥事・薬物事故のリスク対策・未然防止)

    薬物検査実施の狙いは主には

    • 採用時に、違法薬物使用者を雇用しないようにすること
    • 採用後にも、従業員に違法薬物使用の誘惑があっても思いとどまらせること

    です(採用時の違法薬物使用の検知と採用後の違法薬物使用の防止)

    むろん、違法な薬物使用者が見つかった場合にはどのように対処をするか予め定めておく必要があります。

薬物検査の使い方

  • 1. 乱用の抑止力

    従業員に対して、違法薬物使用の誘惑があっても「思いとどまらせる」、強力な抑止効果があると期待できます。

    違法薬物使用者に対する人事規定を整え、日頃はコンプライアンス遵守教育(薬物乱用防止教育)をおこない、さらには薬物検査の実施をするということであれば、好奇心で違法薬物に手を出すなどということには絶大な抑止力になると思われます。事業者のリスク対策として最もポピュラーな使われ方です。

    違法薬物使用
    のきっかけ
    「好奇心・友人に誘われ」が最多で半数近く (出典:平成26年度厚生労働科学研究「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」)
  • 2. 乱用者の発見

    違法薬物を使用している従業員を見つける狙いで実施されます。

    予め人事規定を定め、薬物乱用防止教育などで事業主の姿勢を明示しておくことが必要です。一方、薬物検査結果が陽性の場合であっても、例えば正規に処方された服薬であれば違法ではありませんので、これらの判断が行える体制を整えておくことも必要です。

  • 3. 違法薬物の不使用証明

    当社はISO/IEC 17025規格認定のもとに検査を行っていますので、その検査結果報告書は社会的に信頼されるものです。また、国際社会で認知される証明効果がある報告書の発行も可能です。

    • 国家資格取得時の麻薬中毒者ではない医師診断の根拠として
    • 海外赴任先へ提出する薬物不使用証明書として

    米国では、1988年に「職域薬物検査法」が制定され、連邦職員、軍関係、公共交通・運輸・危険物輸送、パイプライン、原子力施設等の職員に対して米国薬物乱用・精神衛生管理庁が策定するガイドラインに基づく薬物検査が義務付けられています。ヨーロッパでは、欧州職域薬物検査協会によるガイドラインに基づいて検査が実施されています。

  • 4. 人材の採用時

    違法薬物使用者を雇用しないようにする狙いで実施されます。

    事業主の違法薬物に対する姿勢、雇用条件、違法薬物検査実施に対する考え方、検査実施の要領、検査結果の取り扱いなどについて予め定めておき、採用試験受験者に提示する必要があります。

  • 5. 断薬マネジメント

    違法薬物の使用歴・逮捕歴がある者、もしくは薬物依存症からの回復途上者に雇用の門戸を開く場合、当人が断薬を続けられるよう管理・支援する狙いで実施されます。違法薬物経験者であることを分かったうえで雇用する場合、断薬を続けることが雇用の条件となるでしょうから、管理面から定期的な薬物検査が必要となります。薬物検査の陰性結果は、当人の断薬を続けるモチベーションの維持にもつながります。

    また、薬物依存症からの回復には「断薬を続けること」が大切ですが、そのためには回復途上者が社会的に孤独にならない事が大切です。仮に検査結果が陽性であったとしても民間に通報義務はありませんが、医療・福祉施設との連携や本人との約束を明確にしておくなど、雇用主の薬物依存に対する理解を含めた準備が必要です。全国に10万人*いるといわれる薬物依存症者の社会的自立のために、精神保健福祉や再犯防止の観点からも、このような雇用促進は望まれています。

    *(出典:平成16~18年度厚生労働科学研究「こころの健康についての疫学調査に関する研究」)
海外事情
我が国よりも薬物乱用が蔓延している国では、これら乱用薬の常習的使用者や薬物依存症の者も多く、「従業員の生産性向上、欠勤の削減、職場での盗難などの犯罪の削減、従業員間のトラブルや薬物横流しの防止」などの狙いでも薬物検査が実施されています。
ご注意
我が国では、いずれの場合も、検査実施に際しては本人の事前承諾が必要です(個人情報保護法に基づく)。また、薬物乱用者は細工をしてでも薬物検知から逃れようとしますので、採尿時や採尿後の検体保管などでの不正防止対策が必要です。

日本では現在、薬物検査実施のガイドラインの類は示されていません。検査の実施にあたって、どのようなことに注意し、また準備をすればよいのか、具体的には当社の専門担当者がアドバイスいたします。

より詳しく知りたい方に、
資料をお送りいたします。

職域における
乱用薬物検査「解説資料セット」を差し上げます。

リーフレット/Q&A集/容器/封印シール/依頼書/報告書/価格表…他
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