コラム

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ヘビー・メタル系ロック・ミュージックによる頭頚部外傷  (3月2日改訂)


 爆音を轟かすロック音楽が、難聴を引き起こすことは知られているが、頭や頚にもダメージを及ぼすことが科学的に明らかとなった。オーストラリアの大学から出た論文1)によると、ヘッドバンカーと呼ばれる、音楽に合わせ激しく頭を振る運動に問題があるらしい。

ロック・ミュージックは、全米のレコード・CD売上高の3割に達し、まさに音楽界の屋台骨である。今を遡ること40年あまり前、ロックグループのレッドツェッペリンがボストンでステージを行った際、音楽に合わせ「ステージに向かって頭を振り続けるファン」が集団発生した。以来、彼らのことをhead banger(ヘッドバンカー)と呼ぶようになった。

   頭の揺すり方には、上下運動、回転運動から、全身運動、体当たりなど、さまざまなスタイルがある。日本では、一部ファンの間で「ヘドバン」と通称されており、縦ヘドバン、横ヘドバンなどの用語が用いられるそうである。

過激なヘッドバンカーには脳障害が起こることが報告されており、15歳のドラマーが外傷性脳動脈瘤で硬膜下血腫に至った症例が90年代に報告されている2)。「たかがロックで」という思い込みから、精査されず見逃される症例は、本邦にも結構あるかも知れない。

さて、今回の検討は、シドニーのNew South Wales大学でリスク安全学を専門とするPattonらによって出された、きわめて学術的な論文である。平均的な成年男性の頭頚部をモデルに、さまざまな角度や拍子で頭を揺すった場合のダメージ度を理論式から導き出した。想定した揺すりの角度は、第七頚椎と第一胸椎の間で45〜120度、曲の拍子は毎分80〜180回である。頭頚部にダメージを与える外力の大きさは、Head Injury Criterion (HIC)とNeck Injury Cliterion (NIC)で数値化された。

その結果、頭部へのダメージを表すHICでは、120度で揺すった場合、毎分115拍のビートで頭痛や眩暈を起こすとされる指数135以上に達し、150拍では意識消失も来たし得るほどのダメージが加えられることがわかった。しかし角度を45度に減ずると、180拍でもこの数値には達しないという。

一方、頚部では、NIC値が8.7m2/s2を超えると軟部組織にダメージを来たすとされるが、120度の運動で140拍、90度の運動でも165拍でこの量に達してしまうという。一方、おとなしく45度で済ませておけば、この数値には達しないで済む。

著者らは実際、地元のミュージシャンに、ヘッドバンガーの好む曲を演奏してもらうことも行ったが、Spinal Tapの”Tonight I’m Gonna Rock You Tonight”など、毎分180拍に達するものも多く含まれていたという。「ヘドバンせずに、何がロックコンサートか!」と思う諸氏には、頭に入れていただきたい情報である。

古来よりお祭りには、しばしば健康に悪影響を及ぼしかねない儀式が珍しくない。心臓麻痺や、死人が出る祭りも存在する。しかし何百年も粛々と受け継がれているところを見ると、高揚感をもたらすものに人は惹かれる習性があるようだ。人生、長さだけが問題ではないのである。健康に気をつけたいならば、ロックコンサートにお出かけのヘッドバンカー諸氏は、揺する角度を小さめにすることで、頭頚部のダメージを減ずるよう願いたい。また、いくら揺すっても大丈夫、という防具を開発すれば、売れるかもしれない・・・。

文献:
この文献はBMJ誌がクリスマスの特集記事として掲載したものである。具体的なミュージシャンや曲名について詳細に言及されており、マニアにはぜひ一読を推奨したい。
  1. Patton D, Mcintosh A . Head and neck injury risks in heavy metal: head bangers stuck between rock and hard bass.
    “British Medical Journal“ on line版 7 Jan. 2009
  2. Egnor MR, Page LK, David C.
    Vertebral artery aneurysm-a unique hazard of head banging by heavy metal rocks.
    J Pediatric Neurosugery 17:135-138, 1991

 





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