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検査特集 〜 血清アミロイドA(SAA) 〜

東京大学動物医療センター・内科系診療科 大野耕一先生に、猫の炎症マーカーである「血清アミロイドA(SSA)」の炎症マーカーとしての評価、その臨床的有用性と現状の問題点について詳しく解説をしていただきました。
※ 詳細は株式会社ファームプレス社発行「mVm(エムブイエム) Vol.18No115 2009/9」に掲載
また、弊社ではmVm誌の別刷を用意しております。詳細は、弊社営業担当までお問い合わせ下さい。

炎症刺激によって血中濃度が著明に増加する一群の蛋白を急性期蛋白と呼ぶが、医学領域ではそのうちのいくつかが炎症マーカーとして利用されている。犬の炎症マーカーとして多くの獣医師が測定するようになったC反応性蛋白(CRP)は代表的な急性期蛋白である。一方猫ではCRPが炎症に対して鋭敏に反応しないことが報告されており、CRPに代わる炎症マーカーとして血清アミロイドA(SAA)やα1酸性糖蛋白(AGP)、ハプトグロビンなどが有望視されていた。


SAAもCRPと同様に炎症刺激時に、インターロイキン1(IL-1)、IL-6、腫瘍壊死因子(TNFα)などの炎症性サイトカインによって主に肝臓で産生される急性相蛋白である。続発性アミロイドーシスとして組織に沈着するアミロイドA蛋白(AA)の前駆物質としても知られている。猫のSAAもヒトと同様の構造をもつ蛋白であることが分かっており、我々のこれまでの研究で免疫比濁法を用いたヒトSAA測定用試薬(栄研化学)と自動分析装置を用いて測定が可能であることが明らかになっている。現在はLSIメディエンスの動物検査センターにおいてこのヒトSAA測定用の試薬を用いた免疫比濁法によって猫SAAの測定が可能である。
手術侵襲(避妊)時の猫SAA濃度を経時的に測定してみると(図1)、術後8時間から上昇し始め、48時間でピーク(術前の数十倍)に達したのち、96時間後には術前のレベルまで低下した。同時に測定したAGPでは変動幅が小さいうえ、経時的変動が遅いことからも、SAAのほうが炎症マーカーとして適していると考えられる。


図1 避妊手術後のSAAと 1-AGP 濃度の推移
健常猫3頭に避妊手術を行い、SAAと 1-AGP 濃度を経時的に測定した。黄色の線がSAAでピンクが 1-AGPで、それぞれの基準範囲を色づけして示してある。(文献6より抜粋)


さまざまな疾患猫でSAA濃度を測定してみると、健常群に比較して疾患群では猫SAA濃度が有意に増加していることが判明しているが(図2)、これまで炎症の評価に用いられてきた白血球数とSAA濃度との関連性を調べてみると、両者の間には相関性が認められない。すなわち白血球数だけでは炎症の有無を判断するには極めて不十分であることが示唆され、猫の炎症の判断には白血球数だけではなく、SAAなどの炎症マーカーも同時に評価すべきであると考えられる。
では猫では実際にはどのような疾患でSAAが上昇しているのであろうか?単一の疾患に罹患している猫だけに限定して、我々のデータを整理してみると、膵炎やFIP、リンパ腫といった炎症を伴う疾患の多くで上昇が認められ(表1)、SAAの炎症性疾患のマーカーとしての有用性が示唆される。一方で甲状腺機能亢進症や糖尿病、腎不全などでも上昇例が比較的多く認められたが、これらは血管内皮細胞傷害や異所性のSAA産生によるものと考えられている。


図2 健常猫と疾患猫における血中SAA濃度
健常猫26頭とさまざまな疾患を有する猫323頭の、血中SAA濃度を比較したところ、疾患群では有意にSAA濃度が上昇している。(文献6より抜粋)


表 1. SAA濃度が著明に上昇(≥5 mg/l)していた疾患*
疾患名 SAA 濃度 (mg/l) 基準値を超えた症例数
頭数 平均 最小値 最大値 ≥0.82 mg/l (%)
急性膵炎 3 56.9 23.2 88.9 3 (100)
FIP 8 29.4 0.2 88.3 6 (75)
甲状腺機能亢進症 4 16.5 0.1 64.2 2 (50)
糖尿病 8 14.9 0 80.6 3 (38)
リンパ腫 30 13.7 0 61.6 17 (57)
胆管炎 11 11.9 0 79.3 4 (36)
悪性中皮腫 6 10.4 0.5 48.5 5 (83)
慢性腎不全 11 8.7 0 40.7 5 (45)
肺癌 3 7.7 0.1 22.7 1 (33)
扁平上皮癌 8 5.7 0 32.7 3 (38)
多発性嚢胞腎 4 5.5 0.5 14.9 2 (50)
外耳炎 7 5 0 33.9 1 (14)

*単一の疾患を有するもので、複数疾患があるものは除外。また3症例以上ある疾患に限定。
(文献6より抜粋)


これまでの研究成果から猫のSAAは犬のCRPと同様の炎症マーカーとして臨床応用が可能であるものと考えている。測定の意義としては
などが考えられる。

しかし現状の猫のSAA測定に関しては以下のような問題点も感じている。

最後の感度については、ヒト用試薬を使用して自動分析装置で測定した場合に、SAAが低い濃度の場合にELISAとの相関性が悪いことや、明らかに炎症があるのにSAAの上昇が認められないことがあることなどから、恐らく抗ヒトSAA抗体の交差性に多少の問題があると推察している。現状でも十分利用価値があるのだが、できれば今後試薬(抗体)の変更によってさらに感度の高い検査になることが望ましい。


参考文献

1) 大西堂文、猪熊壽、大野耕一、浜田晋吾、野口主宏、佐々木主計「レーザー免疫比ろう法による健常犬および疾患犬におけるC-反応性蛋白の測定」日本獣医師会雑誌53:595-601,2000.

2) Kajikawa T, Furuta A, Onishi T, Tajima T, Sugii S. Changes in concentrations of serum amyloid A protein, alpha 1-acid glycoprotein, haptoglobin, and C-reactive protein in feline sera due to induced inflammation and surgery. Vet Immunol Immunopathol. 29;68:91-98(1999) .

3) Ohno K, Terado M, Iwata H, Inokuma H, Onishi T. Expression of recombinant feline serum amyloid A (SAA) Protein. J Vet Med Sci.61:915-920(1999) .

4) Hansen AE, Schaap MK, Kjelgaard-Hansen M. Evaluation of a commercially available human serum amyloid A (SAA) immunoassay for determination of feline SAA concentration. Vet Res Commun. 30:863-872(2006)

5) Sasaki K, Ma Z, Khatlani TS, Okuda M, Inokuma H, Onishi T. Evaluation of feline serum amyloid A (SAA) as an inflammatory marker. J Vet Med Sci. 65:545-548(2003) .

6) Tamamoto T, Ohno K, Ohmi A, Goto-Koshino Y, Tsujimoto H. Verification of measurement of the feline serum amyloid A (SAA) concentration by human SAA turbidmetric immunoassay and its clinical application. J Vet Med Sci. 70:1247-1252(2008) .

7) Tamamoto T, Ohno K, Ohmi A, Seki I, Tsujimoto H. Time-course monitoring of serum amyloid A in a cat with pancreatitis. Vet Clin Pathol. 38:83-86 (2009) .




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